大人でも気をつけたい、ぬいぐるみ症候群とは?依存してしまう心理や向き合い方について
「ぬいぐるみは私のことを分かってくれる」
「お気に入りは私にいつも優しい」
こんな気持ちから大人になっても、自分の本音や悩みをぬいぐるみに聞いてもらう方がたくさんいらっしゃいます。
その一方で、ぬいぐるみ症候群という言葉があるように、ぬいぐるみに依存することを心配する声も聞かれます。そもそもぬいぐるみに依存することは問題なのでしょうか。
ここからは、大人でも掛かってしまう、ぬいぐるみ症候群とはどういったものなのか、ぬいぐるみに依存してしまう理由、上手な向き合い方などについてご紹介していきます。
ぬいぐるみに依存してしまう気持ちは?
ぬいぐるみは私たちにとって、身近な存在であり、心の支えとなることがあります。その柔らかな感触や可愛らしい姿は、私たちに包容力や安定感を与えてくれる存在です。
だからこそ無条件の理解や優しさを感じることができ、人々はつい自分の本音や心情をぬいぐるみに打ち明けてしまうのでしょう。
心の壁を取り払ってくれ、ストレスや孤独を和らげる手助けをしてくれる、そんなぬいぐるみだからこそ依存してしまう人が出てくるのです。
ブランケット症候群との関係はある?
ぬいぐるみ症候群という言葉から、類似の言葉としてブランケット症候群を思い出す人もいるでしょう。
ちなみにブランケット症候群の定義は、
「特定のアイテム(いちばん多くみられるのが毛布やぬいぐるみなど布系のもの)を持つことで、精神的な安心感を保っている状態」
引用元:https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/blanket_syndrome/
とされています。
漫画『スヌーピー』に登場するライナスという男の子は、いつも青い毛布を持ち歩いていますよね?
実際、ブランケット症候群は「ライナスの毛布」「安心毛布」と言い換えられることもあります。
このように、ぬいぐるみやブランケットといった、特定のアイテムをいつもそばに置いておくことで安心感を得られる状態という点で、ブランケット症候群やぬいぐるみ症候群は似ていると言えるでしょう。
なぜぬいぐるみに依存してしまうのか?
では、ぬいぐるみ症候群の人たちはなぜ、ぬいぐるみに依存してしまうのでしょうか?
ぬいぐるみは友達、安心感を感じている
ぬいぐるみ症候群の人がぬいぐるみに依存する理由の一つに、ぬいぐるみが友達であり、安心感をもたらす存在だと感じられる、という点が挙げられます。
どんなことを語りかけても嫌な反応を返しませんし、離れていくこともありませんから、一貫して寄り添ってくれるように思えるのでしょう。
このように無条件の愛を与えてくれる存在、安心感のある触り心地といった理由から、過去の嫌な経験や日常のストレス、寂しさなどを紛らわしたり、癒やしてくれる存在になっているといえます。
思い出が詰まっている存在
ぬいぐるみにはたくさんの思い出が詰まっていることも、ぬいぐるみに依存してしまう理由のひとつです。
長く一緒に過ごしているほど、そのぬいぐるみには過去の楽しい出来事や人生の大きな出来事のときに側にいてくれた思い出が詰まっているはず。
これまで経験した様々な瞬間を共有している存在として、ぬいぐるみは心の安らぎや満足感に繋がっているのかもしれません。
一方で、ぬいぐるみに依存する傾向のある人は、日常のストレスや孤独感から逃れるために、過度にぬいぐるみに依存したりぬいぐるみ以外との関係性を遮断してしまう傾向も見られるそうです。
ぬいぐるみにストレスを発散している
ぬいぐるみを抱きかかえることは、日常のプレッシャーやストレスを低減して、心の緊張を和らげる効果があります。
ただしこうした心身へのリラックス効果は一時的なものであり、ぬいぐるみへの依存は長期的に見るとストレスへの対処や気持ちのコントロールがうまくできないままになってしまうかもしれません。
無条件に自身の愛情や悲しみを受け入れてくれる
大人になってもぬいぐるみが好き、という人は全体で見るとそれほど多くはないと思います。ただ、一定数の大人は、成人してもぬいぐるみに対して強い愛着を持っています。その違いは何なのでしょうか。
ぬいぐるみは、無条件に自身の愛情や悲しみを受け入れてくれます。
大人になるにつれて人間関係は複雑化し、自分を受け入れてくれると感じられる機会はどうしても減ってしまいます。
むしろ、年齢を重ねるほど、日常生活でのストレスや責任が増えていきます。
こうしたストレスをたくさん抱えている人ほど、ぬいぐるみを心の支えとして、依存を深めていってしまうのかもしれません。
ぬいぐるみに依存する人が注意すべきこと
自分のぬいぐるみをそばに置いておくことは、決して悪いことではありません。ただし、ぬいぐるみへの過度な依存には注意が必要です。
周りの目がすごく気になってしまう
ぬいぐるみに依存してしまう人は、普段から周りの目を過度に気にしてしまう人が多いといわれています。
他者からの評価に敏感であり、自分の感情より「空気を読んで周りに合わせること」を優先してしまう。こうした人は、自分の感情を心の中に閉じ込めてしまいがちです。
その結果、自分の喜びや安心感、悲しい気持ちなどを吐き出す相手として、ぬいぐるみに依存してしまうのです。
日常で安心感が得られない
ぬいぐるみに頼りすぎることで、日常生活で安心感を得られにくくなる可能性があります。
というのも、ぬいぐるみは確かに持ち主に安心感を与えてくれる一方で、その安心感は直接的な課題や人間関係などを解決してくれるわけではなく、もたらしてくれる効果は一時的かつ限定的なものだからです。
自身の心身の健康バランスを保つためには、ぬいぐるみだけではなく、現実のつながりを築くことも大切です。
自信が持てない
ぬいぐるみが唯一の心の支えになると、自己肯定感も下がってしまうかもしれません。
ぬいぐるみは感情表現や反応ができないため、人間関係では自然と生まれるコミュニケーションが不足し自己肯定感や承認欲求を満たせず、結果として自信を持てなくなるのです。
幼少期や最近のトラウマを引きずる
ぬいぐるみに依存することで、幼少期や最近のトラウマへ対処したつもりになっているケースもあります。
ぬいぐるみは確かに一時的かつ表面的な安心感を与えてはくれますが、本質的な問題の解決にはなっていません。
そのため、トラウマを抱えたまま過ごすことになり、何かあったときにフラッシュバックしたり、日常的に大きなストレスを抱えたままになってしまうことが考えられます。
自身だけでトラウマに向き合えない場合は、ぬいぐるみに頼るのではなく、家族や友人からの心理的なサポートや精神科医やカウンセラーのサポートが必要です。
ぬいぐるみはあくまで補完的なサポートと捉えることも時には重要です。
ぬいぐるみへの依存はどうやって克服するの?
ぬいぐるみに依存しすぎることの危険性について理解したところで、ここからはぬいぐるみへの依存を克服するための方法について見ていきましょう。
ストレス発散できる遊び・趣味を見つける
ぬいぐるみへの依存を克服するために、新しい遊びや趣味を見つけることも大切です。
遊びや趣味に取り組むことで、自分自身の再発見や自己肯定感の向上、成長の機会などさまざまな面で持ち主の可能性を広げてくれます。
趣味を通じて新しい交友関係を築ければ、ぬいぐるみでは得られない肯定感や自信を得ることができます。音楽やスポーツなどのアクティビティであれば、心身のリフレッシュ効果も期待できます。
無理に現状を変えない、無理をしない
「ぬいぐるみへの依存を克服したい」と無理をしてしまう人がいますが、時に逆効果になってしまうケースもあります。
自己肯定感が低く、現状を受け入れるのが苦手な人は、無理をしないことも心の安定を保つうえで大切です。
自分を無理に変えるのではなく、
「小さなことから変えていく」
「新しい趣味を始めるけど無理しない」
など、少しずつ生活リズムや行動を変えていきましょう。
楽しみながら徐々にぬいぐるみ以外の心の拠り所を見つけられれば、ぬいぐるみとの適切な距離感もきっと見つかるはずです。
お気に入りを入れ替えてみる
ぬいぐるみへの依存を克服する上で、お気に入りのぬいぐるみを時折入れ替えてみることも効果的な方法の一つです。
新しいぬいぐるみと関わることで、過度な依存を避けたり、自分自身に目を向けるきっかけになるかもしれません。
身近な人・専門家に相談する
ぬいぐるみへの依存を本気で克服したいなら、信頼できる身近な人や専門家などに相談してみることも効果的です。
例えば、カウンセラーはあなたの話をきちんと聞いてくれますし、安心感を与えてくれます。そして、依存の背後にある深層心理を教えてくれ、その対処法を見つける手助けをしてくれるはずです。
こうした他者との関わりを通じて、本質的な問題解決ができ、心の安定を築くことにつながるでしょう。
まとめ
今回は、大人でも人ごとではない「ぬいぐるみ症候群」について紹介してきました。
忙しい現代社会でのストレスから解放され、過去の思い出や安心感と結びつく存在として、ぬいぐるみはあなたにとって大切な存在なのは事実です。
ですが、ぬいぐるみへの依存を高めすぎると、心のバランスやストレスへ対処しにくくなる弊害も起きうることを理解できたと思います。
ぬいぐるみは、ぜひ大切にしてください。そして、大きなストレスやトラウマを抱えた際には、家族や友人、カウンセラーなどに相談したり、趣味に打ち込んで発散したりなど、ぬいぐるみに過度に依存することがないように気をつけてくださいね。